背景
アメリカでは300-600万人の方が心房細動があり、2050年までに最大1600万人まで増えると予想されている。
心房細動は脳梗塞のリスクになるため抗凝固薬がリスク管理に必要となるが、よく使われているのはリバロキサバンとアピキサバンである。
そこで、リバロキサバンとアピキサバンはどちらが脳梗塞のリスクを下げるか、または出血のリスクが少ないか解析を行なった。
研究デザイン
後ろ向き研究 Retrospective cohort study
後ろ向き研究とは…対象疾患の患者を「症例」として1グループにまとめ、続いて「症例」と性別・年齢が似通っている人々を選び「対照」として1グループにまとめる。両グループの生活習慣などをさかのぼって調査、比較し、なぜ「症例」グループの人々は病気を発症し「対照」グループの人々は病気を発症しなかったのかを、仮説を立てつつ研究していく。
症例対照研究とも言われる。
製薬企業の転職支援 アンサーズより抜粋
PECO
P (集団):65歳以上の米国メディケア受給者で、90日以内に心房細動/粗動と診断された人
E (要因):リバロキサバン (15mg or 20mg )
C (対照):アピキサバン (2.5mg or 5mg)
O (アウトカム):主要虚血性イベント (虚血性脳卒中、全身性塞栓症) or 主要出血性イベント (脳出血、他の頭蓋内出血、致死的な頭蓋外出血) の発生
抗凝固薬処方から最大4年間の追跡を行なった。
統計解析方法
The rate difference (RD), or difference in the absolute adjusted incidence between rivaroxaban and apixaban, was estimated assuming the Poisson distribution, with variances calculated via generalized estimating equations to compensate for weighting-induced dependencies.
本文より
ロジスティック回帰より求めた傾向スコアによる逆確率の重み付けで交絡を調整し、逆確率加重比例ハザード回帰を用いたハザード比とポアソン分布を想定した一般化推定方程式を用いた発生率差を推定した。
今回のデータはメディケアからのもので非常に多くのデータがある、つまり交絡因子が多い。
この交絡因子に対処するためにinverse probability of treatment weights (IPW)という手法を取り入れている。
結果 (Primary Outcomeのみ)
65歳以上の米国メディケア受給者で、90日以内に心房細動/粗動と診断された人はMedicareでは2078642名が当てはまった。
除外基準を経て、最終的には581451名 (リバロキサバン227572名、アピキサバン353879名) が組み入れられた。
結果、6946名 (14.6 per 1000 person-year) が虚血 (3807名) や出血 (3139名) のイベントがあった。
リバロキサバンとアピキサバンは、それぞれadjusted ratesが16.1 vs 13.4 per 1000 person-years (Rate difference 2.7 [95% CI:1.9-3.5], Hazard Ratio 1.18 [95% CI:1.12-1.24])であり、リバロキサバン使用群では有意にイベントが多いことがわかった。
Discussion
リバロキサバンは1日1回投与に対し、アピキサバンは1日2回投与の薬です。
そのため、リバロキサバンは飲み忘れたり、内服する時間が早かったりすると効果に幅が出ると言われていました。
この研究はそういった噂を証明するようなデータとなりました。
IPW (IPTW) とPSマッチングの使い分けはどうするのか、ということも疑問に挙がります。
IPWは平均処置効果 (ATE) を、PSマッチングは平均処置効果 (ATT) を推定目標にしています。
今回の研究ではリバロキサバンを使った集団、アピキサバンを使った集団に分けて違いを見ているためIPWが適応されます。
リバロキサバンを使った集団が、リバロキサバンの集団内で違いがあったかを確認するときにはPSマッチングを適応することが多いようです。
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